一族の未来設計ものがたり ~後編~

一族の未来設計ものがたり ~後編~

実際に、先代の残した株主47名をたずねて、10年がかりで資産と株式の買い戻しを行った会長さんがおられます。

この方にお目にかかったのは東京商工会議所の事業承継セミナーでした。
社長交代後の人生をかける大きなテーマとして、この問題に取組む決意を固められ、次次世代であるお孫さんが代表になるまでには、100%に近い株式の掌握を行うことを宣言されました。

当社は戦前から続く化成品のメーカーですが、火事で設備を大きく毀損したときに、オーナーの出身地の一族から出資を仰ぎ、再建が可能になったのでした。

その後、株式と交換に担保提供、債務保証などを請負った一族の方々が相続のために分散していきました。

約40年の時を隔てて、会長の時代には代表一族の株式所有率は27%にまで落ち込んでいました。
債務保証が解消しても名義上の株主が残っており、その権利が相続された結果です。
また共有地や共同保有という形で、当社の底地が多くの地権者に分散していました。
出身地では、配当金と現物支給の石けんが好評で、株主や債務保証者は、会社のタニマチとして、経営には口出しをしない無言の応援者として、暖かくこの会社を見守っていました。

ところが、当社に対して大手企業から買収合併、TOBがかけられてしまいました。
バブル崩壊後の需要の大幅な変動期に、経営判断を誤り、立体駐車場や建築物件にお金が寝ていました。
そこに、外資の攻勢で販売が漸減していきました。
その経営責任を取り、子息<お婿さん>に代表を譲り、孫への「資産の一本化」を「一大決心」して実行すると宣言されたのです。

まずは、出身地の菩提寺にある過去帳や改製戸籍を基に「家系図」と「関係者の相関図」を作成しました。
それからの10年間は「資産の調整目標」リストに基づき、当社と会長が保有する地元の物件や遊休資産を代替資産として株式の買い集めや、所有権の放棄、寄付、遺贈契約、などの手立てを講じて、とにかく集めに歩いたのです。
一年の大半を地方行脚して、相続した子孫を口説いて回ったのです。

当社と会長に遺恨を持つ一族の遠戚者には、融和戦略を立て、集約の最後に訪ねていきました。

大勢が決し、外堀が埋まっていくこと、多くの権利者が会長側になびいたことをすでに知っていたのでしょうが、なかなか面談のめどが立ちませんでした。

そこで、お婿さんと孫を連れ、3世代でこの方を訪ねました。遠く九州の地で、地元を追われ村八分にされた遺恨を解きほぐしていきました。

最終的には太宰府の境内で面談が実現し、和解が成立したのです。
高額の株式買取り請求を退ける代わりに、出身地の菩提寺に残る先祖代々の墓の永代供養を行う事、一族の名誉回復を行う顕彰碑を建てること、本人名義での小学校への体育館の寄贈が行われました。

この大株主の18%が収容された結果、当社の株式は安定し、工場の底地が一本化され、名義株主が整理されました。

また、出身地の3カ所の寺では、毎年同じ時期に先祖代々の供養が行われています。それは当社代表が財産信託を行い、そこから30年間にわたって法要の経費が出されているからです。

こうした事例が示すとおり、未来において、会社にどのような火の粉が降りかかるかは、予測が出来ません。

ただしハッキリと分かっていることがあります。
人には寿命があり、厳然とした時間の制約があります。
しかし、企業や資産には締切りはありません。
いつの時代においても、使いやすく整備された資産と権利関係は、後世を生きる者にとって、ありがたい先祖からの贈り物です。感謝されて今に生きるのはこうした「未来への思い」、子孫を思いやる気持ちではないでしょうか?

私は事業承継を通じて、多くの企業経営者のハッピーリタイアを演出してきました。
最後に残された時間を、どのように有意義に過ごすか、それが幸せな余生の過ごし方ではないでしょうか。

どうか、未来の一族や会社の従業員に感謝される、中興の祖として、記憶に残る経営者であっていただきたいと思います。

私どもがお近くに居て、いつでもご支援させていただきます。
安心してお任せ下さいませ。

内藤 博

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