経営承継円滑化法は使えるか?

皆さんは、経営承継円滑化法をご存じでしたか?法律の正確な名称は、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」と長ったらしいのですが、 要は特別なルールを定めて中小企業の負担を軽くし、事業承継が円滑に進むようにしよう、という趣旨の法律です。

もう法律の名前だけで難しそうで取っつきにくいとお感じになると思いますが、今日は細かいことは抜きにして、「使えるのか?」にテーマを絞ってお話しし たいと思います。

この法律は、大変複雑で対象とする項目が多岐に亘るので、今回は、先代経営者が生前に後継者に自社株を贈与するケースについて見てみましょう。

●どんな会社が使える?

これはいろいろな要件があるのですが、基本的には親族(同族)内で事業承継を予定している、オーナー企業(同族で過半数の株式を持っている企業)となります。

俗に言うところの同族企業ですね。

昨年の改正で、後継者が親族外(他人)の場合も適用対象となったのですが、赤の他人に高額な自社株をただで渡す(贈与する)というのはあまり一般的で無いので 今回は割愛します。

つまり、先代経営者のお父さんから、後継者の息子さん(最近は娘さんも増えてきました)に、自社株を贈与して代表を交代しようと考えている会社が使える可能性 があると言うことになります。

また、経営承継円滑化法のメリット(次項参照)を継続して享受するには、実際に経営承継円滑化法の認定を受けた後も、いくつかの要件を満たす必要があります。特に、

・5年以内は雇用の80%(平均)を維持
・5年以内は代表を辞められない
・5年経過後も、納税猶予の対象となった株式を保有していなければならない

という条件を満たす必要がありますので、今後も長く事業を継続出来るという見込みがある会社である事は重要です。

ちなみに、同族で経営されているケースが非常に多い医療法人は、この法律の対象ではないので残念ながら使えません。

●どんなメリットがある?

経営承継円滑化法が対象としているのは、以下の三つです。

①贈与税(相続税)の納税猶予
②遺留分に関する民法の特例
③金融支援 

言い換えると、一般的にこの三つの要素が障害となって事業承継は円滑に進まない、とも言えます。

1月15日に申請期限を迎えるのは、①の特別税制の部分です。

先代経営者の努力で長い間成長を続け、業績が好調な会社は自社株の評価が大変高額になっているケースが多く、これを後継者に贈与するとこれまた高額な贈与税 の負担(数百万円から場合によっては億超えのケースもあります)を強いられてしまいますので、その様な会社にとっては大変メリットがあると言えます。

贈与税の納税猶予の対象となるのは、 『贈与前から後継者が既に保有していた議決権株式等を含め発行済完全議決権株式総数の2/3に達するまでの部分』 とされており、この範囲までならば、要件を満たしている限り贈与税がなんと100%納税猶予となるので、当てはまる会社さんは検討してみる価値がありそうです。

また、②の『遺留分の民法特例』ですが、先代経営者が亡くなった後の相続について、トラブルを回避して後継者の経営の安定化を図ります。

『時間を掛けて、毎年少しずつ後継者に自社株を贈与して準備しているから、事業承継対策は問題無い』

とお考えの方。

後継者以外にお子さんはいらっしゃいませんか?

生前に贈与した自社株は、例え何年前であろうと、遺産分割協議の時に相続財産に持ち戻される『特別受益』に当たります。 後継者以外のお子さんにも、一定割合の財産を相続する権利が民法で保証されていまして、これを遺留分といいます。

この対策を怠って後継者に自社株を集中させると、先代経営者が亡くなられた後に家族が骨肉の争いを繰り広げる『争族』に発展しかねません。

その意味で、先代経営者の生前にこの対策が打てるこの民法の特例は、この制度の一番のメリットかも知れません。

●手続きは?

特別税制と民法特例で申請窓口が違うだけでなく、特別税制の申請だけでも提出書類が20種類以上にも及びます(現在申請中のケース)。

しかも、東京の場合、関東経済産業局が窓口になるのですが、申請マニュアルを見て一回で完璧な書類を準備するのは至難の業です。 当局のご担当者とやり取りをしながら、修正を重ねながら必要な書類を整備していく、というかなり手間のかかる作業となります。

事業承継の、特に経営承継円滑化法の専門家に依頼するのが合理的と言えます。

●まとめ

これまでお話ししてきたように、

・親族内で事業承継をする予定である
・自社株の評価額が高騰しており、事業承継(自社株の生前贈与)について高額の贈与税が予想される
・今後も長く事業が継続すると見込まれる

この要件を満たす会社さんは、経営承継円滑化法が『使える!』と言えそうです。

そして、一生に一度、多くて二度はない事業承継の複雑な申請をご自分でなさるのは、経営者として合理的な判断とは言えません。

是非、経営承継円滑化法の専門家、事業承継士にご相談ください。

堀 浩輔

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