SMAPの独立騒動から学ぶオーナーシップと後継者対策(後編)

前回はSMAPの事例をお話ししました。その続きをお話しします。 SMAPの場合はメリー喜多川副社長がどうしても娘に後継者をやらせたい、という主張が、悲劇を招いたと言えるわけです。では、どのようにすれば経営権と財産権を分離して、オーナーシップを保つことが出来るのか、具体的な方法に踏み込んで解説したいと思います。 下記のような株主構成の会社がありました。後継者候補は、代表取締役の次男だったのです。

代表取締役 : 40%
代表取締役の奥様(専務取締役) : 25%
代表取締役の長男(取締役) : 20%
代表取締役の次男(取締役)
※社長候補 :
10%
代表取締役の三男(社外) : 5%

                                                      この時、奥様からの要望として、 「うちの家族は仲がいい。次男には社長をやってもらいたいが、長男も取締役だし、兄弟の長として一番多くの株式を持たせたい。」

この奥様に対しては、「社長候補である次男に株式を集中させなさい」といくら説明しても、理解してもらえませんでした。ですが、ここでただ手をこまねいているわけにもいきませんので、こういう場合は、次の提案をするのが有効です。

『配当優先無議決権株式』を使いましょう!

これは配当優先という、他の株主よりも優先的に配当をもらえる権利がついている代りに議決権がないという種類株式の一種になります。つまり、自益権という財産面の権利は確保しながら、共益権という経営面の権利を放棄するような特殊な株式に変更して、後継者以外に株式を譲渡するという方法をとるのです。

まずは上記の株式を相続前に次のように変更します。

  変更前 変更後  
    配当優先無議決権 普通
代表取締役 : 40% 20%① 20%②
代表取締役の奥様 : 25% 20%③ 20%④
代表取締役の長男 : 20% 20%A     
代表取締役の次男 : 10%      10%B
代表取締役の三男 : 5% 5%C    

このように一部の株式を配当優先無議決権株式にした後、相続が起きた段階か、あるいは贈与により、①をAに③をCに、さらに②と④をBに移動します。こうするとこで、後継者候補の次男には普通株式が35%集中することになり、長男と三男には配当優先無議決権株式でそれぞれ40%、25%が渡ることとなり、次男が100%の議決権を掌握することができます。

また、長男と三男は優先して配当を受けることができますし、長男が表面上は40%と最大の株主になるため、奥様の要求も満たすことができます。

普通株式の一部を配当優先無議決権株式にするためには、株主総会での全株主の同意が必要であり、特別決議よりもはるかに厳しい決議要件を求めています。ですから、上記の会社の奥様がおっしゃるように、「うちの家族は仲がいいから…」というのであれば、その仲のいいうちに決議を取ってしまえばいいのです。もし、現段階で決議が取れないようならば、それこそ将来何が起こるかわかりませんので、「ほら。こんな平等な決議すら今の段階で通らないようであれば、それぞれが奥様をもらい、お子様ができた時には株式を巡って争いが起きますよ!」と諭してあげればよいのです。

なお、配当優先無議決権株式の評価については、
①類似業種比準方式により評価する場合には、株式の種類ごとに配当の要素のみ配当実績に合わせて評価し、②純資産価額方式により評価する場合には、そのまま評価すればよいとされていますので、配当優先により、普通株式の2倍も3倍も配当していない限りは、それほど高くなるという心配もないでしょう。

このように、種類株式を使うと、会社の最終判断を下すべき立場の人間、つまり代表取締役が経営権をコントロールできる発行済株式数の2/3以上を確保しながら、同時に会社の株主としてオーナーシップは保つということもできますので、どうしても後継者以外にも持たせる必要がある時には考えてみてもいいと思われます。

金子 一徳

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