定款を変更して経営を守る①

 定款というものは会社の憲法にあたりますが、設立以来ずっと変えていないという企業も結構多く、最初に作ったまま(これを「原始定款」といいます)放置されているのをたまに見ます。中でもごくごくまれに、発起人が7人いる定款も見ますが、これは平成2年の商法改正の前に設立された会社だな、とすぐにわかります。
 あと、多いのは平成17年に商法から会社法へ以降した後も、以前の商法のままの規定になっている会社、これはかなり見受けられます。

 我々が生活する上で憲法を意識しないのと同じように、会社を経営する上で定款を意識しないのは、当たり前といえば当たり前かもしれません。しかし、この定款はいざ法律的な争い、法的手続き、契約などが生じた場合に、非常に重要になりますので、常に見直していく必要があります。

 では、具体的に定款の規定の流れに沿って、事業承継を確実かつスムーズに行うために、どう変更していけばよいかを解説します。

 まず、第1章 総則という見出しになります。ここで重要になるのは、(機関構成)です。取締役が3名未満であれば、取締役会ははじめから設置できませんが、3名以上だと「取締役会を設置する」と当たり前にようにしているではないでしょうか。

 こんなケースがありました。創業オーナーとその息子が大株主であり、取締役に2人ともなっていました。そして現社長は元従業員であり、株式はほとんど持っていません。いわば雇われ社長。そしてもちろん社長なので代表取締役です。この3人で取締役会を構成していますから、決まるものも決まらないわけです。何か決議をとろうとすると、取締役会を開催して説明して、根掘り葉掘り聞かれて、あげくの果てに理不尽な理由をつけられて、却下されたり、それはもう経営なんてできたもんではありません。

 こんなことが生じないように、取締役は最低限の人数で運営するというのがお勧めです。従業員の中から優秀で右腕になってくれる人や、親族がたくさん入社している場合にポストを与えるために取締役になっていることが多いわけですが、それだったら、執行役員にしてあげて、従業員として雇用保険等に加入してあげたり、退職金規程を作って優遇してあげた方がよっぽど感謝されます。

 重要事項は取締役会の過半数で決するという建前上、株主総会とちがって、1人1票で決するわけですから、場合によってはクーデターが起きて、2:1で代表取締役の地位も下ろされる可能性が常につきまとうわけです。 会社経営が良好だったり、代表取締役との人間関係がうまくいっている時には全く問題ありませんが、おかしくなってから、取締役会設置から取締役会非設置にするというのはそれなりに大変なものです。株主総会で否決されたりしますし、上記のような大株主が創業オーナーである場合は、なおさらです。
 ちなみに、私はとあるベンチャー企業で取締役が3名しかいない会社の取締役に就任していましたが、内紛が勃発し、もう一人の取締役と一緒に辞任することにしたんですが、取締役会設置会社だったために辞めた後でも権利と義務を負うことになってしまいました。早く取締役非設置会社にしてほしい、と要望してものらりくらりと逃げられてしまったのです(これってヒドイと思いませんか?新たに取締役を見つけてくれるまでは辞任登記も受け付けてもらえないんです!)

 それに、取締役会がなくなれば監査役あるいは会計参与を置く必要がないというのもありがたいことです。これも、実際は機能していないケースがほとんどでしょうが、以前、オリンパスの粉飾会計事件でも、取締役の業務執行の監視を怠ったということで数十億円の損害賠償をされたことが大きく報道されましたが、このように監査役の責任はものすごく近年重くなってきました。そのため、名義だけでもいいから引き受けてくれるという奇特な人はだんだん少なくなってきていますから、そもそも最初から置く必要がなければ、それに越したことはないわけです。

 どうしても、取締役を3名以上置きたかったら、置くのは構いませんが、その時には員数に制限を設けて、例えば「当会社の取締役は,1名以上5名以下とする」という文言を入れましょう。決して「当会社の取締役は,1名以上とする」というように上限を不明確にするのはやめましょう。大株主が実質的な経営執行を行おうとする場合に、取締役を多数送りこまれる可能性を残してしまうからです。

 ですから、取締役、監査役という地位はそう簡単に従業員に渡して良いはずがないのです。ましてや、対立するような兄弟や親戚ならなおさらです。なるべく最少人員で会社経営を舵取りする、これが原理原則です。

『船頭多くして船山に登る』
よく考えてください。
 

金子 一徳

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