自分の会社の株主が分からないとき

ときどきこんな話があります。

「うちの会社の株主が誰だかわからない…」

みなさん、そんなことあるわけないでしょ、と思われるかもしれませんが、実は結構こういった相談があります。

なんでこんなことが起きるかと言えば、業歴の古い会社にありがちなんですが、古いが故に途中で株主に相続が発生して、散逸してしまっているんですね。

また、名義株式といって、名前を借りて株主になってもらっているが、実質的にお金を出している人間は社長だったりするんですが、古い会社だとその認識が曖昧になってきて、「あれっ、どうだったっけ?」というケースもあります。

会社法には、取締役は株主名簿を作成し、氏名・住所・所有する株式数などを記録しておくことになっています。(会社法121条)ですから、株主が誰かということは、本来的には会社が把握しているはずですが、これが把握しきれていない。

では、どうやって確認するか。

法人税申告書の別表二「同族会社等の判定に関する明細書」によって、確認するという方法があります。
この明細書は、もともと法人税法上でその会社が同族会社になるかどうかを判定するために書くものです。ただし、欠点があって、株主グループの所有する株式数の合計が最も多いものから順次記載されますので、すべての株主がこの明細書に記載されるわけではない、ということです。

ところで、本来は株主から新しい株式を譲ってもらった新株主は、株主名簿に自分の名前を記載してもらうように、<名義書換え請求>をすることができます(会社法133条1項)。

名義書換の請求は、株券発行会社の場合、株券を提示することによって、株式取得者が単独で行うことが可能ですし、株券不発行会社の場合には、株主名簿記載の株主と株式取得者が共同して行わなければなりません。この名義書換えがないと、第三者及び会社に対して対抗要件とならず、株式取得者に不利益が生じますので、普通はするわけです。

ところが、これが親戚同士、知人同士だとなあなあになってしまったり、結構いい加減なのです。

名義株式の考え方については、実は非常に難しくて微妙です。基本的な考え方としては、名義はあくまで名義だけであり、実際にカネを出した者が株主であるという主義をとっていますので、カネを出した人に相続が起これば、名義株式はカネを出した人の相続財産となります。名義株式の判定は、時間がたてばたつほど曖昧になってきます。ただし、次の事項が証明できるならば、誰が本当の株主かが特定できるとしています。

①設立や増資の時に誰がカネを出したか、銀行口座の動きなどで客観的に判定可能か。
②株券は発行しているか。(発行していたら)その名義は誰になっているか、誰が保有しているか。
③株主名簿の名義は誰になっているか。
④配当が行なわれている場合、その配当は誰が受取っているか、受領印は誰のものか、支払調書は誰の名前になっているか。
⑤配当について誰が所得税の申告を行なっているか。
⑥出資をせずに株主になっている方が贈与税の申告を行なっているか。
⑦出資をせず株主になっている方は株主であることの認識があるか。
⑧出資時から現在までどの程度の期間が経過しているか。
⑨名義人の方から買取り請求がなされているか。
⑩株主総会の通知は誰に出しているか。実際に誰が出席しているか。

というわけで、こうした書類・証拠・記録を収集して整理するだけでも恐ろしく気の遠くなるような作業になるわけですから、特に事業承継が近いうちに発生しそうな場合は、一度株主名簿を整理して、誰が株主かをはっきりさせておいた方がいいでしょう。

金子 一徳

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