定款を変更して経営を守る② 株式の譲渡制限

「第2章 株式」の中の「株式の譲渡制限」も重要な規定です。

「当会社の発行する株式の譲渡は,取締役の承認を受けなければならない。」

文言としてはこのようになっているところが多いと思われます。

私が今まで見てきた会社の中でこの規定がついてないところは、だいたい100社あって1社あるかないか程度で、ほとんどの会社はついていると言っていいでしょう。これ自体はつけて置くということに大賛成です。これがついていれば、勝手に株式の売買をすることを阻止できます。

ただし、会社法は「株式譲渡の自由の原則」を認めています。現株主A氏から、B氏に持っている株式を譲渡したいという申し出があった場合、取締役会または株主総会で否決したら、会社は別の第三者に買取人を指定するか、見つからない場合は自己株式として買い取らなければいけないのです。株価が低ければいいですが、高い場合はたいへんな事態になります。

ところで、こうした株式の譲渡制限を設けていても、一つだけ株式の移動を会社が制限できないことがあります。それが「相続による移動」なのです。

これに対抗するために、上記の規定に続けて「相続人に対する売渡請求」を設ける方法があるのですが、これをつけていいのか、つけてはいけないのかは、私たちプロの間でも見解が分かれるほど難しい問題です。

もしついているとしたら「第2章 株式」に以下のような文面でついているはずです。

「当会社は相続により、当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することが出来る」

この規定は、特に相続によって株式が分散されるのを防ぐことを目的につけているわけですから、例えば株主構成が下記のようなにとっており、相続によりやっかいな株主にわたりそうな場合、これを阻止できるので、かなり有効な規定と言えます。

(C社の事例)

① 現社長 15%
② 現社長の息子(後継者候補) 5%
③ 現社長の兄(社外) 70%
④ 現社長の兄の息子(社外) 10%

※この会社は創業オーナーが亡くなり、その長男である③がいったんは社長の座につき経営をしていました。ところが、会社経営が傾きかけたため、その弟である①が代表取締役としてバトンタッチすることになり、結果として追い出されてしまったという経緯があります。ですから③の息子である④は本来の路線から言えば3代目として社長の座に就く予定だったわけですが、一緒に社外へ追放されてしまい、今はフリーターをしています。

さて、ここで③が高齢になっており、もし亡くなったとしたら、相続により④の息子へ株式が渡ることとなります。会社に対して恨みを持っている者が株主に入ることほど、経営を脅かすことはありません。この場合には、上記の規定をつけておけば、相続があって、株式が④に相続されたとしても、④に対して売渡請求をすることができるわけです。

ただし、2つ条件があります。一つは分配可能額の範囲までしか買い取れないという財源規制です。これは株価のコントロールを普段から行っておくとか、分配可能額を増やすような努力をするなど対策を打っていくことになります。もう一つは、株主総会の決議が必要になりますが、その時に相続人は議決権を行使できないということです(会社法175条2項)。

さて、ここでよく考えてみると、たいへんおかしなことが起きる可能性があります。つまり、こういうことが考えられるということです。C社の事例において、仮に現社長である①に相続が発生した場合に、②は議決権を行使できない、つまり③と④が結託して②に対して売渡請求を行い、それを買い取ることで合わせて95%の株式を手中に納めることができてしまうのです。
このケースではもともと大株主がさらにシェアを増やすということになりますが、これがと3.の株式数が逆の場合には、少数株主が会社を乗っ取ることも起き得るのです。つまり、会社の経営権を守って、息子に継がせるというシナリオを、この規定を付けることでかえって自分の首を絞めてしまう場合もあるということです。

このように、先に相続が発生した方が負けてしまうということが成り立ってしまうのです。ですから③がどう考えても相続が先に発生するならば、この規定はそのままにしておいていいと思いますが、もし先に①に相続が発生しそうなら、定款変更をして規定を取ってしまわなければなりません。もっとも定款を変更するには株主総会の特別決議が必要なので、とても③や④が賛成するとは思えません。

以上のように考えていくと、結局は株式でマジョリティをとられてしまっている状況を打開しない限りは何もできないじゃないか、ということになってしまいます。でも、こうした株主間の対立が起きてからは株主総会で決議するのは難しいとしても、仲良くやっている時ならば可能ではないでしょうか。

「備えあれば憂いなし」ということですね。

(Writer:金子 一徳)

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