2025年12月には毎年恒例の税制改正大綱が出ました。その中で、「不動産小口化商品」の税務強化は、単なる商品性の見直しではなく、会社の事業承継や個人の相続に影響を与える論点となりました。
これまでは、不動産小口化商品を活用することで、評価上は不動産として扱われる仕組みを利用し、路線価評価や場合によっては小規模資産の減額措置を絡めることによって▲80~85%程度の評価減を行うことができました。仮に10口1億円の投資をしたとすると、評価額が2000万円、場合によっては1500万円程度まで圧縮することが可能でした。つまり、法人が保有する現預金を「不動産小口化商品」へ振り替えることで純資産を圧縮し、その結果として株価の引き下げ、特に純資産価額方式による自社株評価を引き下げる、という設計が行われてきたのです。
しかしながら、これが、2027年1月1日以降は時価ベースでの評価になってしまうのです。そうすると、上記のケースだと1億円の現金を使って「不動産小口化商品」へ投資したにも関わらず評価が1億円のままで変わらず、効果がないということになってしまうわけです。こうして、株価が上がるということは、承継時の相続税や生前贈与時の贈与税の負担がそのまま増えるということです。特に株式の大半をオーナーが保有している企業では、そのインパクトは極めて大きくなります。
さらに注意すべきは、納税資金の問題です。株価が上昇しても、会社のキャッシュフローが同時に増えているとは限りません。評価額は高いが現金が足りない、という状態に陥れば、株式の一部売却や外部資本の導入を迫られる可能性も出てきます。それはすなわち、経営権の安定性に影響を及ぼしかねません。承継の本質は単なる税金対策ではなく、「経営を安定して次世代に引き継ぐこと」です。その観点からも、株価上昇リスクは軽視できないのです。
また、今回の改正案は、社長個人の資産構成にも変化が及びます。これまで小口化商品を活用して相続財産を圧縮しつつ、分割しやすい形で資産を保有するという設計が可能でした。しかし評価が実質時価に近づけば、圧縮効果は薄れ、課税対象額は増加します。加えて、相続発生時に自社株の評価が高止まりしていれば、相続財産を均等に分割することが難しくなり、後継者以外の相続人との調整がより複雑になります。結果として、株式の分散や議決権の不安定化を招く恐れもあります。
これからは「評価差を利用する承継」から「時間と制度を活用する承継」へと発想を転換していかなければならないでしょう。早期の計画的な贈与、種類株式の活用、持株会社体制の整備、事業承継税制の適切な適用など、複数の手法を組み合わせて全体最適を図る必要があります。同時に、本業の収益力を高め、企業価値そのものを強くすることが、結果として最も確実な承継対策になります。企業価値が高いからこそ株価が上がるという現実を前提に、その株価上昇をコントロール可能な形で承継計画に織り込むことが重要なのです。
税務環境は常に変化します。特定の商品やスキームに依存した設計は、制度変更一つで前提が崩れます。だからこそ、社長には早めに全体像を整理し、承継までの時間軸を明確にしながら、段階的に対策を講じていただきたいのです。節税は手段であって目的ではありません。経営権を守り、会社を次世代へ安定的に引き継ぐことこそが最終目標です。その視点で、今一度、承継設計を見直す好機と捉えていただければと思います。
Writer:金子 一徳
