2026年4月、いよいよ新年度がスタートしましたね。事業承継を検討されている経営者の皆様にとって見逃せない「2つの大きな改正」がありました。
① 特例承継計画の提出期限「1年半」の延長
事業承継税制の根幹となる「経営承継円滑化法」のうち自社株の贈与税・相続税が実質ゼロになる「特例措置」を受けるために必須となる「特例承継計画」の提出期限が、2026年3月31日から2027年9月30日まで1年半延長されました!実はこの延長、今回で3度目となります。「また伸びたのか」と楽観視するのは危険です。政府内でも「これ以上の延長はモラルハザードを招く」との声が強く、今回が実質的なラストチャンスになると目されています。
もちろん、この制度、メリット・デメリットもあるのですが、とりあえず提出しておくことで選択肢の幅を広げられます。株価が仮に5億円の場合、通常通りの相続や贈与になった場合、事業承継時に約半分の納税負担が生じますが、この制度を活用すれば納税をしなくてよくなるというメリットがあります。加えて民法特例も活用すれば、家族間での遺留分の問題も解消でき、家族同士の争いも防ぐことが出来るのです。そして、最大のメリットは、制度を盾にしながら株式の集約化を図ることが出来ることです。
ところで、この制度を巡る案件で最近2つ面白い事例がありました。1つ目は、とある経営者から「私は代表権を持っており、娘へ株式を贈与したいのですが、筆頭株主は私の母で、80%も持っているのです。それでも経営承継円滑化法は適用できるものでしょうか?」・・・実は経営承継円滑化法における要件は、代表取締役だった時期に筆頭株主であれば良いというものであり、急いで過去の情報を辿ったところ、除籍謄本をたどっていって、ようやく母が代表取締役を保有していた時期が、わずか3か月ながらあったことが判明したため事なきをえました。(まぁ奥の手としては、もう一度、母に代表取締役として復活してもらう手も考えましたが(笑))2つ目は、とある後継者から「経営承継円滑化法を贈与で計画していたところ、父である経営者が亡くなった!もう使えないのでしょうか?」・・・そんなことはありません。今度は相続に切り替えればいいのです。ただし、遺言または遺産分割協議によって、後継者に株式が相続されなければなりません。よって、相続争いになってしまうと、面倒になりますので、他の財産をいくつか諦めてでも株式を手に入れるようにアドバイスして、何とかこの制度を活用することに成功しました。
② 在職老齢年金の支給停止基準が「65万円」へ大幅引き上げ
2つ目は、現役で頑張るオーナー社長にとっての朗報です。 働きながら年金を受け取る際、報酬と年金額の合計が一定額を超えると年金がカットされる「在職老齢年金制度」。この支給停止基準額が、昨年度の51万円から「65万円」へと大幅に引き上げられました。これまで、多くの社長が「年金がカットされるくらいなら、報酬を下げて調整しよう」あるいは「年金は諦めてバリバリ報酬を取ろう」という二択を迫られてきました。
例えば、昨年度までですと、月額の老齢厚生年金が20万円の場合。これまでは報酬が31万円を超えると、超えた分の2分の1が年金が支給停止になっていましたが、これからは月収45万円までなら年金を1円も削られることなく全額受給できる計算になります。これを事業承継に応用するなら、社長交代をして後継者に実務を譲りつつ、会長や顧問として一定の報酬を受け取りながら、並行して年金という「公的なキャッシュフロー」を最大化することが可能になります。この制度は60歳から適用されますので、これからは60歳で社長交代を行い、退職金をそこでたっぷりと獲得して、そこからは報酬を45万円まで減額して悠々自適に仕事とプライベートを満喫するという人も増えてくるかもしれません。これが「俺も早めに社長交代して会長職になろうかな・・・」という動きに繋がれば・・・なんてことを期待したりしています(笑)。もちろん、まだまだ現役で頑張りたいし、報酬も200万円、300万円は欲しい!というそこの経営者の皆さん、合法的な方法はいくつかありますので、ぜひ弊社までお問合せ下さい。
Writer:金子 一徳
