「相続にまつわるよもやま話 その3」

いよいよ暑い季節がやってきましたが、この時期に亡くなる方も増えるのが人の常。
人間生まれれば亡くなる時が来ます。会社も設立したらいずれ無くなる時が来ます。
今回は、人の死にフォーカスしていきます。

人が亡くなった時に、相続や事業承継という承継行為の前に、遺族がしなければいけないことがたくさんあります。普段は何気なく過ごしていて、
いざ、自分の身近な人が亡くなった時にどのような手順で行動すればよいのかを、時系列に沿って解説しましょう。

①通夜・告別式の開催
亡くなった人のことを親族、友人、知人、会社関係者にお知らせし、通夜および告別式を行います。会社によっては社葬を執り行うこともあります。不本意ではあるでしょうが、事前に葬儀会社に問い合わせしておき、納得できるところを選んでおくことも重要です。ここ10年間で葬儀にかける平均費用はどんどん下がっているようです。

②死亡届出書の提出
亡くなった人の親族等は亡くなったことを知った日から7日以内に死亡診断書を添付して死亡届出書を市区町村長に提出しなければなりません。これによって、市区町村長は、届出書を受理した翌月末までに所轄税務署長に通知することとなります。今はほとんどの方が病院で亡くなる時代なので、死亡診断書はその場で書いてもらえます。

③役員の変更登記
亡くなった人が役員に就任していた場合には、役員変更の登記が必要になります。
(名前だけ役員に連なっている会社もあるかもしれませんので、生前にそういった関係図は、弊社の事業承継ノートにあるエンディングシートに記してもらっておきましょう)合わせて、代表取締役であった場合は、死亡に伴い保険が下りる設計をしていることが多いので、保険会社に連絡を忘れないようにしましょう。また、亡くなる直前まで会社で勤務していたとすれば、死亡退職金および弔慰金を支給することもできます。それぞれ非課税枠がありますので、うまく活用しましょう。

④税務署への異動届の提出
役員の中でも代表取締役という役職にある場合は、所轄税務署に代表者異動の届出が必要になります。

⑤相続の承認または放棄
相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に承認または放棄をしなければいけません。もし、相続人の中に未成年者がいる場合には特別代理人の選任が必要になることがほとんどです。
例えば夫が亡くなり、その妻Aとその一人息子である未成年者Bが相続人のケースを考えます。
AがBに<相続放棄をさせる>という行為を勝手にさせることはできません。理由はBに相続放棄をさせるとAは利益が増えるからです。これを利益相反行為と呼び、必ずAに代わって、相続放棄をさせる、つまり特別代理人が裁判所の許可をもらうことになるのです。(親子が利益相反行為になる…う~ん 唸ってしまいますね)

⑥所得税、消費税の準確定申告
相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に相続人が申告します。
もし、被相続人が青色申告をしていた事業があったら、事業承継した後継者は青色申告の承認申請書を提出する必要があります。

⑦相続税の申告
相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に財産を相続によって取得した方が申告をする必要があります。相続税の申告においては、遺産分割が確定していない場合には、受けられない特例がありますので、申告期限までに遺産分割を確定させるのが理想です。そして、原則この日までに相続税の納税が必要になります。ということは、遺産分割協議でもめそうなら、遺言を書いておいてもらうことがベターです。でも、亡くなる直前に病床に伏せている方に「遺言書いてくれ!」はかなり酷な仕業です。なので、本当は元気でピンピンしている時にこそ、言うべきなのです。

このように、亡くなった方がいると、その亡くなった時から、遺族とその親族や後継者がとらなければならない手続きが怒涛のように押し寄せ、悲しみに浸る間もなく時間はあっという間に過ぎてしまいます。手際よくパッパッとやれ、というのは酷だと思いますので、スケジュール表を見ながら、一つ一つこなしていくようにしましょう。

(Writer:金子 一徳)