富裕層向け不動産元年になりそうな予感がする・・・「事業承継と不動産」の深~い関係

 2023年4月24日から「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。この制度は、簡単に言えば相続によって取得したものの、使う予定がなく不要な土地を国に返却できるという画期的な制度です。

 なぜ画期的かと言いますと、民法上プラスの財産(=欲しい財産)とマイナスの財産(=欲しくない財産)を分けて相続することは出来ず、プラスの財産もマイナスの財産も全部まとめて相続するか、あるいはどちらも相続しない(=相続放棄)するかの二者択一が原則だからです。(限定承認は特殊なのでここでは省略)にも拘わらず、この制度を使えば「預貯金のみを相続し、いらない土地は国に返却する」ことができるのです。

 ただし、「建物がたっている」「汚染されている」「工作物/樹木/車両がある」「除去が必要なものが地下にある」「抵当権等の設定がある」・・・といった土地は使えません。また、別途10年分の土地管理費用相当額の負担金の納入が必要になります。(負担金の計算方法に関して詳細は不明ですが、国有地の標準的な10年分の管理費用は、市街地200㎡の宅地で約80万円、粗放的な管理で足りる原野で約20万円なので、ある程度参考になるでしょう)
 したがって、この制度は、その土地によほどの価値がない場合か、納税する現金がないなど、特殊な場合に限られるかもしれませんが、それでも空き家になって放置されるより、ましではないでしょうか?

 一方で、今年2023年は富裕層向け高級マンションが飛ぶように売れている事実もあります。

 弊社の所在する港区の某大手不動産会社の開発した平均単価2億円の超高級マンションが即完売になるなど、都内は特に絶好調です。そして、超高級マンションと言えばすぐに思い出されるのが、“タワマン節税”という言葉ではないでしょうか?

 

 タワマン節税とは、簡単に言えば、相続税評価額である路線価と実勢価格の乖離を利用して、路線価は低層階でも高層階でも同じなのに、実勢価格が高層階の場合、高値で取引されるというギャップを使った節税のことです。
例えば、実勢価格が1億円でも相続税評価額が3000万円くらいになる場合もありましたが、今後は相続税評価額と実勢価格との差が約1.67倍以上の場合には、相続税評価額が上がることになり、高層階のマンション所有者ほど税額が増えることになるというわけです。

 このタワマン節税は、中小企業を経営するオーナーにとっては、自社株式の評価を下げるという法人における効果と、自分が引退後にもらう役員退職金を使った個人財産の評価引き下げ、のどちらにも痛手となるため、また一つ相続対策に網がかけられた形になりました。(ただし、効果が全然なくなったわけではありません)

 

 さあ、中小企業を経営している富裕層の皆さん、「いやいや自分は富裕層ではないよ」とおっしゃる経営者も、この富裕層包囲網で今後も囲まれていえば、じわじわと真綿で首を絞められるように苦しくなっていくことは明白です。そうならない前に、まずは会社の事業承継をすっきりとさせて、早目の相続税対策に乗り出しはいかがでしょうか?

 弊社でも、ここのところ、会社の事業承継という第一段階の支援を済ませた後で、社長個人の財産運用、節税対策、ライフプラン設計といった第二段階の支援が増えてきております。会社と個人が一体となった支援が出来る事業承継センターならではコンサルティングにご期待下さい。

 

 

Writer:金子一徳