価格について考える

【便乗値上げは当然】
 物価が上がっている。ガソリンは 1リットル200 円に迫る勢いだし、上昇と酷暑の長期化で、冷房にかかわる電気代が心配になる。ランチも 1000 円を超えるものが多くなり、コンビニに置かれた商品は、軒並み値上げである。仕方ないと言えば仕方ないが、少々気を引き締めないと、お金がいつの間にか消えていくという事態になりかねない。
 しかし、海外からの観光客にとっては、日本の商品は、最高品質でありながら激安という認識である。「おもてなし」のサービス文化が、外国人を日本に引き付けているという話もあるが、本当のところは、なんでも安くお金のかからない国であることが、訪日外国人増加の一番の要因と、筆者は感じている。
 とはいえ、インバウンド消費だけに頼ってはいられない.これから、日本の企業も価格を上げていかなければならない。資源高、材料費高を上回る、便乗値上げをすることが必要なのである。そうでなければ、企業は儲からず、給与は増えず、消費は増えない.

 

【価格は相対的なもの】
 価格を高くすると、売れなくなることが怖くて、上げることに躊躇する経営者も多い.たしかに、デフレにどっぷり浸かってきた日本人にとって、価格の安さは何よりの選択基準となる.一方で、価格は相対的なものである.そもそも価格が高い、安いは何かと比較するからそう感じる訳であり、比較するものがなければ、ほとんどの人は、価格の適正さなど判断できないと、筆者は考える.

 私たちの脳は怠惰であり、モノに対していくらの価値があるかを、一から見積もるのが不得意である.だから身近な何かと比較して、価値を見定めるのである.

 

【ビジネスでの応用】
 もし人々が、身近なものと比較して購買を決めるのなら、こちらから比較対象を用意してあげれば良い.
例1
  ①ビジネス雑誌Aの電子版の年間購読料 9600円
  ②ビジネス雑誌Aの紙版の年間購読料  12000円
  ③ビジネス雑誌Aの電子版+紙版の年間購読料 12000円

 3択では③が選ばれ、①と②の2択だった場合は①が選ばれる傾向がある

 

例2
 イタリア料理店の新メニューが1000円で、割高感があり、なかなか売れなかったところ、1200円のメニューを追加したら、1000円のメニューが売れ出した.

 

例3
商品の価格帯の松竹梅では、竹が選ばれる傾向がある

 

 これらは全て相対性で説明できる.比較しにくいものは、考えるのが面倒くさい.だから
あえて比較するものを作ってみることで、購買を促しているのである.
 ずるい?そう感じる人もいるかもしれない.しかし買い手が受け入れる形で、価格を上げて行かないと、会社は存続できなくなる.

 価格を維持する努力ではなく、あげる努力をすることが経営者の責務であり、そのために頭に火を吹くくらい考えることが必要と、筆者は思う.

 

Writer:東條 裕一