後継者塾の仲間を連れて、南三陸の及善商店様に、企業見学にいった。
及善商店さんは、創業百四十年の南三陸では老舗の笹かまぼこ屋さんで、数年前に事業承継を終えて、現在は7代目の社長が切り盛りしている。
南三陸といえば、思い当たる方もいると思うが、2011年3月11日の東日本大震災で、壊滅的な被害を受けた地域である。
20メートル近い津波が押し寄せ、人口の20名に1人が亡くなったところである。
小職とのつながりはかれこれ7年前になる。当時の及善商店さんは震災復興資金と融資で工場を新設したが売上が戻らない状態だった。
商売とは残酷なもので、震災で被害を受けた会社も、受けなかった会社も同じ土俵で戦わなければならない。
そんな理不尽な競争に対して、愚痴ることもなく、ひたすら自分達の商品を信じて、市場と向き合っていた。
それを目の当たりにした時、ただただ感動したことをはっきりと覚えている。
塾生と訪問したのは、これで4回目で、もう50名を超える。
彼らに伝えたかったのは、大きな借金を覚悟して、もう一度会社を立てなおし、暖簾を守ろうとした6代目と7代目の親子の覚悟、へこたれない意思の強さである。
親父は、自分の代で暖簾を下ろしたくないが、息子の代まで借金を負わせることに葛藤していた。
息子はその気持ちを感じて、オレはやる!と宣言した。
会社の存続が決まった瞬間である。
そして、売上を戻すために、奇をてらった商品も出した。新商品を絶えずリリースした。1枚700円の笹かまぼこも販売した。
とにかくあらゆることをした。
一度は死んだ会社だからと、仙台駅内に自店舗を構えるなど、イチかバチかの賭けもした。
結果、百四十年の歴史の中で、過去最高売上となった。
経営者であれば、悩みはたくさんあるだろう。
しかし及善商店さんは圧倒的に不公平な競争の中で勝ち上がってきた。
その泥臭さや愚直な姿勢は訪問した塾生たちに、勇気を与えてくれたと確信している。
Writer:東條 裕一