前号では、2018年の大改正により使い勝手がよくなった経営承継円滑化法について、実務上どこを注意しなければならないかを事例で解説致しました。
今号は、弊社から見た時のこの経営承継円滑化法という制度をさらに改善させる提言を致します。
この制度を現場で使ってみて、まず思うことは、添付書類の多さです。例えば贈与税の申告の際は、既に認定を受けているわけですから、その時点で事業承継税制を受けることができる要件の確認は済んでいるはずです。そうであれば、贈与税の申告する際の添付書類としては、認定書1枚でもいいはずですが、実際は①株主名簿(贈与直前及び贈与後)、②定款の写し、③都道府県知事の認定書及び申請書の写し、④都道府県知事の確認書及び申請書の写し、⑤贈与契約書写し、の添付が必要なのです。
上記の中には、認定申請の際に既に提出している書類(株主名簿、定款、贈与契約書は認定申請時に提出済み)も多く、二度手間になっています。しかも、条文上は、明確に贈与契約書の写しの添付も求められているのに、国税庁が公表している提出書類チェックリストでは、贈与契約書写しは記載されていません。
条文上は「贈与契約書の写しその他の贈与の事実を明らかにする書類」という言い回しなので、認定書及び申請書の写しが「贈与の事実を明らかにする書類」に該当するということで、チェックリストには記載が無いのかもしれませんが、そうであれば、その他の書類についても、認定書及び申請書の写しがあれば、省略ということにしてほしいと願うばかりです。
それから、対象株式の全てを担保提供することが求められている点も改善してほしい点の一つです。この意味を深く考えている中小企業経営者はいないかもしれませんが、最悪の場合、承継した株式すべてを国に持っていかれてしまいます(実際、国が持っていったとしても、権利を行使するかどうかは別にして)。慎重な経営者であれば、この点が事業承継税制適用のネックになってくる可能性もあると思います。
(Writer:金子 一徳)