「連帯保証人はどのように相続されるのか?~同族会社をはじめた瞬間から一家はすべて巻き込まれる~」

さて、冒頭でも触れた「中小企業成長促進法」ですが、ようやく法制化されるというのが私の率直な感想です。そもそも、先進国の中で連帯保証制度を取っている国は日本だけです。せっかく信用保証制度があるにも関わらずです。

事業承継では、引き継がなければならないものがたくさんあるわけですが、とりわけこの連帯保証というのは、事業承継士などのプロが支援しても難しい分野と言われてきました。というのも、第三者である金融機関が関わってくる数少ない分野であるからです。

さて、この連帯保証という制度が、なぜ事業承継のタイミングで最近になってクローズアップされてきたかと言いますと、理由がいくつかあります。
①万が一のことがあれば相続財産になってしまう
 これは、もともと民法の制度として連帯保証人の地位というものが相続の対象になってしまうため法定相続人にとっては、被相続人(たいていは父親であり代表取締役でもある人)からの相続財産に対して相続放棄をしない限り、潜在的な借金を引き継いでしまう、という問題があるのです。もちろん、法定相続人の中に後継者がいれば、その者が通常は引き継げばいいと思うかもしれません。しかし、例え遺言で後継者に相続させる旨を書いても、あるいは遺言がなくて遺産分割協議で後継者だけが相続することになっても、他の法定相続人は、連帯保証から完全に逃れることができないのです。つまり、金融機関は、後継者以外に対しても「借金を返済しなさい」と言う権利があるということです。

②後継者が連帯保証をしたがらない
 ここ5年くらいで顕著になってきた傾向として「自分は連帯保証をしたくない」という主張をする後継者が増えてきています。これは、現経営者に対して「個人で連帯保証しなければならないような収益力の低いビジネスなら継ぎたくない。」「自分はいいけど、妻や家族に借金がもし及ぶようであれば家族は犠牲にできない。」という強烈なメッセージでもあります。親族であれば相続によって正の財産も手に入るわけですから、その範囲の中で継ぐことは可能でしょう。しかし、最近増えている親族外承継になりますと、だいたい反対されるのは、後継者の妻からというパターンです。「今まで通り、平社員(平取締役)として、そこそこの給与をもらっていた方がいいじゃない。わざわざ何で連帯保証する必要あるの?」と言われる後継者も多いと聞きます。

これらの解決策は、実は明快です。
『社長が元気なうちに社長交代を行い、連帯保証人の差し替えを行う』ということに尽きるのです。そして、できればその際に連帯保証人を差し入れなくて融資が出来るように、メインバンクと交渉することをお勧めします。上記のように法制化の流れを受けて、金融機関にその旨伝えれば、きちんと応じてくれるはずです。現に弊社の顧問先でも何社も連帯保証人を抜いてもらったところがあります。

解決策はシンプルですが、これになかなか着手できない会社が多い理由は、現代表取締役が退かなければならないという別のところに問題があります。ここをクリアするための意思決定をさせるのが、事業承継士のような支援者になります。私が代表取締役に良く問う質問があります。

「自分の我や想いを残したいですか?それとも会社や理念を残したいですか?」

(Writer:金子一徳)