ここ最近は、後継者を育ててほしいというニーズが全国で急増しており、弊社としても創業からスタートした後継者塾が今では全国20か所795人の卒塾生を輩出するまで至っています。ですが、実を言いますとニーズが急増したのはここ数年なのです。ちなみにこの後継者塾は、弊社で実施している後継者育成スクールのブランド名であり、後継者が気付きを得て、モチベーションアップし、マインドチェンジを行えることが最大の特徴となっています。その仕組みは、宿題による自社と自分の見つめ直し、それを人にきちんと伝える手法、そしてディスカッションすることで新たな発見をする、という繰り返しが、人を急速に成長させ、後継者としての自覚を芽生えさせるというものになっています。業種や規模は違えども、後継者という特有の悩み、意識、自覚を共有できる数少ない仲間に出会うことが出来るという面も支持されている一つだと考えています。
さて、タイトルにある「後継者として相応しいか相応しくないかの判断を社長が下すのは危険だと心得よう!」には、2つの側面があります。1つ目は、主観がものすごく強い人種であるがゆえに、自分の“高密度”フィルターを通して判断しているからです。私共は、顧客先に訪問して後継者面談をする機会が多いのですが、事前に社長から「あいつはまだまだだ。」「やる気がない。」というネガティブ情報を与えられてしまいます。しかし、実際に会ってみますと、意外と優秀で、実は会社経営について深く考えていたりすることが多いのです。これは、ある意味当たり前で、社長という存在が立ちはだかっている状況で能力をフルに発揮できるはずがありませんし、社長を差し置いてやろうものなら、怒りを買うことをわかっているからそうなるのです。『能ある鷹は爪を隠す』とはよく言ったもので、後継者の隠れた能力、意欲、を正確に見抜かなくてはなりませんが、それは経営者には難しいのです。
2つ目は、勘違いです。「あいつは実家を継ぐ予定だからうちを継ぐはずがない。」「能力はあるが、独立したいと言っていたから無理」これらは思い込み、勘違いです。もちろん、「数年前に社長をやってみないかと声を掛けた時に「いや、自分は今のままでいいです」と断られたという事実に基づいていたとしても、数年たって仕事に自信が出てきて、気持ちが変わるかもしれません。
実際にこんなことがありました…。その会社は、自動車の部品製造業をやっていて、何年か前に社長がガン宣告を受けました。訪問した時に社長から開口一番「うちは後継者がいないから俺の代でとじる。」と言われたものの、どうも話を聞くと、将来の夢や構想の話が出てくるので、後継者と思われる人はいませんか?と聞いたところ、「だいぶ前に今の専務(親族外)に声掛けたが、その時に親族に継がせようか迷って、甥っ子にも同時に声をかけたんだ。それが面白くなかったらしく、断られたことがある…」という内輪話が出てきたのです。そこで一度、2人で会わせてもらうことにしました。もちろん、社長が謝罪して、もう一度正式にお願いするという前提で、です。そして専務に単刀直入に聞いてみたところ、「あの時はまだ若かったし、甥っ子がやるなら、その下で働いてもいいかなと思っていた。ウマが合わなければ独立すればいいと思ってたし。若かったんだと思います。」ということになり、後継者を引き受けてもいいということになりました。
実は、こうして経営者と後継者の間を取り持って、潤滑油のようにツナグ役割、つまり事業承継士がいることによって、潜在的な後継者をあぶりだすことも出来るのです。事業承継士は先入観なしで、人を見極めますし、過去のいきさつはいきさつとして、現在どういう状況にあるのかを分析することができるのです。そして、経営者や後継者と面談しても決して感情的になることはありません。
後日談として、この専務には改めて後継者塾に入ってもらい、事業を先代から引き継ぐとはどういうことか、どんな心構えで受け止めたらいいのか、を学び、今では立派な経営者として事業を引き継いでいます。そうして、この後継者は、先代の甥っ子を追い出すことなく、現場のリーダーとしてうまく使いこなしており、今のところすべてうまく収まっています。
2020年、今年はコロナ禍ながら、関東で弊社が受託している後継者塾として、①しながわ後継者塾(主催:品川区)、②東京北みらい塾(主催:北区、無料)、③事業承継塾(主催:東京都中小企業振興公社)さらに今年度から新たに始まる後継者塾として、④後継者育成講座(主催:川崎市)、⑤SAITAMA後継者塾(主催:一般社団法人事業承継協会 埼玉支部)、がありますので、詳しくはメール本文の案内をご覧下さい。
(Writer:金子一徳)