連帯保証人と相続

連帯保証人という制度は先進国の中で唯一日本にだけ残った制度です。もちろん、この制度があったからこそ、中小零細企業が借入をおこすことができ、事業が継続できたという正の側面はありますが、一方、倒産した場合に個人まで責任が及ぶ、一度失敗した経営者の再起が難しかったという負の面があったことも見逃せません。

 

この連帯保証人制度に関する改正案が、中小企業成長促進法に盛り込まれて2020年6月12日(同年10月1日施行)に国会を通過しました。この法律が普及すれば、連帯保証人を代表取締役が個人で差し入れる必要がなくなり、より自由な経済活動が行われるようになるでしょう。

 

ところで、連帯保証人制度を民法の側面から見ますと、れっきとした相続財産になります。例えば、代表取締役に長男と次男がいて長男が後継者で次男は他社でサラリーマンをしていたとします。代表取締役が亡くなってしまいますと、例え遺言で長男だけが連帯保証人を相続しても、金融機関は法定相続通りに相続したと見なして、次男にも請求できるということは、以前お話しました。

 

今回は、税法の観点から見ていきましょう。例えば、代表取締役には個人財産が2億円あったとします。一方で、個人で借金が▲1億円あったとしましょう。この場合、長男と次男はそれぞれ、下記の通りの財産を相続したとして相続税が課されることとなります。
{(2億円-1億円)-(3000万円+600万円×2)}×1/2=2900万円 
① 長男・次男それぞれの納税額:385万円(計算省略)
② 長男・次男それぞれの手取り額:2900万円-385万円=2515万円

 

今度は、この借金が連帯保証人という形で、会社借入金▲1億円に対してあったとしましょう。そうしますと、長男と時間はそれぞれ、下記の通りの財産を相続したとして相続税が課されることとなります。
{(2億円-(3000万円+600万円×2)}×1/2=7900万円
① 長男・次男それぞれの納税額:1670万円(計算省略)
② 相続後に会社が破綻して、1億円が顕在化し、これを2人で平等に負担したと仮定すると、長男・次男それぞれの手取り額:7900万円-1670万円-5000万円=1230万円

…となりますので、先に相続税をたくさん納税した分、手取りが減ってしまうということがわかると思います。これが、実は負債額の確定がない相続の恐ろしさです。ここで一つ疑問が残ると思います。相続後に破綻するような会社なら、相続直前の経営状況はかなり悪いはずなので、負債として認めさせることが出来るのではないか?という疑問です。実は、認めてもらえる場合もありますが、かなり特殊なケースなので、ここでは割愛します。

 

しかしながら、税務的には認めてもらったとしても、後継者ではない次男からすれば常に金融機関から連帯保証人としての責任を求められるリスクが残ることに変わりはありません。そこで、金融機関と「免責的債務引受契約」をしておくことで、法定相続分と異なる負担割合にすること(上記のケースでは長男だけが返済義務を負うように変更すること)が出来るのです。ただし、この契約は引受け者(上記のケースの場合は長男)の返済能力つまり会社の返済能力を金融機関が判断するため、事業承継士のような専門家に依頼するのが良いでしょう。

 

…ということで、結論としては代表取締役が元気なうちに、社長交代を宣言し、その過程で、金融機関と交渉を行って、連帯保証人を代表取締役から次の後継者に差し替えるのがベターで、連帯保証制度そのものから脱却できるようになれば、それがベストと言えるでしょう。そのためにも、社長交代を見込んだ『事業承継計画書』を作成して、それを内外に示しながら着々と準備をするのが何と言ってもセオリーになります。

(Writer:金子)