経営承継円滑化法について知っておくべきポイント 後編

前回からの続きです。2018年に大改正した経営承継円滑化法について知っておくべきポイントについていくつかお話をしました。後編でも、引き続き、知っておくべきポイントについてあげていきます。

 

●株価を下げてから贈与するのがセオリーであることに変わりなし

納税が猶予されるからと言って、株価を引き下げずに、この制度を使った場合にどうなるかといいますと、他の法定相続人の相続税率を押し上げてしまい、かつ後継者が納税猶予されてしまい不公平感がもろに出てしまいます。
後々もめないためにも、株価を引き下げて贈与するのがセオリーです。

~ 事業承継後、業績悪化の場合と好調の場合 ~
確かに、仮に事業承継が終わり、経営していく中で、事業がうまくいかず株価が下がり、
最終的にM&Aによる株式売却や解散に至った場合には、
納税額を再計算し減免するということが出来るようになりましたので、その点においては株価を引き下げる意味はそれほどありません。

しかし、逆に業績が好調で株価が上がった状態で株式売却した場合は、もともと納税猶予された税金を納めることとなるわけですから、この納税猶予されていた税金を低く抑える、つまり株価を引き下げておくことがセオリーとなります。

●複数株主が対象はいいが、3人までの後継者は必ず1人に絞れ!

新制度の特例措置を受けることによって、後継者を最大3人まで特定後継者として、納税を猶予する対象に認められることになりました。

しかし、これだと同時に代表権を保有した者を同じ社内に3名抱える状態になるのです。
経営の機動性、意見が割れた場合のリスク、従業員や対外的な見方、
そして何より将来において考え方の相違から代表者3人が分裂することも想定されます。
3人が分裂し、納税猶予が取り消されることによって
税負担の問題、同時に株式買取りの問題も発生、場合によっては退社もあって、
社内は大きく混乱し、業績に悪影響を与えることは目に見えています。
「船頭多くして経営は成り立たず」これは中小企業の大原則と言えるでしょう。

●株式会社は手間とリスクが大きい。株券不発行会社へ定款変更を忘れずに行おう

この経営承継円滑化法を使って納税猶予を受けようとする場合には、担保提供が必要になります。
この担保には自社株式が充てられます。
株券発行会社の場合は、税務署への担保提供のために、
現実に株券を発行して、これを法務局に供託する手続きが生じるなど、手続きが非常に煩雑になります。
一方で、株券不発行会社の場合は、税務署への書類の提出のみで担保提供が可能です。
そもそも株券発行会社は、株券の紛失・改竄・盗難等のリスクが高く、
株券不発行会社にしておいた方がデメリットは見つからないくらい、圧倒的に優れています。

このように、経営承継円滑化法を活用して事業承継を円滑に行おうとする場合には、一般の方はもちろん、専門家でもわかりにくい点が多いため、
弊社のような事業承継専門のコンサルティング会社にお尋ねしてみてはいかがでしょうか?

 

(Writer:金子 一徳)