『事業継続力強化計画』を後継者が策定するメリット

後継者がリーダーとなってBCP策定に取り組むことで、従業員のことを知る機会になる、まとめ上げる力を養える、チームで成果を出すことで後継者の応援団ができる、経営者から認められる等、様々な意味と効果があります。

そして、BCP策定よりも時間や労力の負担が少ない「事業継続力強化計画」を後継者が策定することも同様に、一石二鳥にも、三鳥にもなるメリットがあります。

 

一般的に、中小企業が、事業継続力強化計画を策定することで得られるメリットは、
①認定企業は、税制優遇、金融支援、補助金の加点対象等、国が用意した支援策を受けることができる、
②実際に策定することで、自社の事業継続で大切なことを認識し、対策を検討できる、
の2種類に大別できると思います。

前者は支援策の享受、後者は策定そのものによる効果です。そして、後継者が策定することで、より意義があるのは②のメリットです。

 

まずは、①の享受できる国の支援策をご紹介します。
・日本政策金融公庫による低利融資や、信用保証協会による信用保証枠の拡大等の金融支援
・認定計画に従って取得等をした防災や減災の設備に対する特別償却20%適用の税制措置
・一部の補助金において審査の際に、加点を受けられる予算支援
このように、計画策定を促進するために、国では様々な支援策を用意しています。

 

それでは、次に②の後継者が策定を通じて得られる効果について考えてみます。

事業継続力強化計画を策定する中では、主に、次の項目を記載していきます。
・ハザードマップを活用し、自社の災害のリスクを人、モノ、カネ、情報の4つの切り口からどのような影響があるか確認・認識
・災害が発生した直後の初動対応を、同じく4つの切り口から検討
・リスクへの具体的な事前対策を、同じく4つの切り口から検討
・平時の推進体制(訓練の実施、計画の見直し)

このように、計画の項目を埋めていく作業では、「人(人員)」「モノ(建物・設備・インフラ)」「カネ(ファイナンス)」「情報」の4つの経営資源の切り口から、災害が発生した時の事業活動への影響を考え、初動はどうするのか想像し、影響を踏まえて事前にどのような対策を実行するのか、ポイントを絞って検討していく必要があります。このため、後継者が策定をすることで、重要な4つの経営資源という観点から自社を見つめ直す作業を行えます。

自社の拠点がある地域のハザードマップ等を実際に調べる、機械設備の設置状況を確認する、従業員に聞いてパソコンのサーバーの状況を確認するといった、計画書の項目を埋めていく中で、必ず4つの経営資源の観点で思考する作業を後継者は計画書の策定を通じて体験できます。

この作業を通じて、会社の見えない価値を知るきっかけになり、自社の強みを再認識し、何が重要なのか、不可欠なのかを考えることができるという効果が生まれます。時には、社内外の関係者とコミュニケーションをとりお互いの事を知るきっかけにもなるでしょう。経営資源を守るための対策は何をすれば良いのか等、新たな気づきがあるかもしれません。もう少し具体的に考えるために、自社のBCP策定に発展させていくことも可能です。
約5ページのフォーマットを埋める作業で、これらの素晴らしい意味と効果を得られるのですから、後継者が事業継続力強化計画の策定を行うことは多大なメリットがあります。

事業継続力強化計画は、BCP策定と比較すると時間や労力もかかりません。中小企業庁のウェブサイトにある策定の手引きを参考に取り組めば、1~2日間で作成できます。また、行政も策定を促進しており、専門家による無料のアドバイスや策定支援がありますので、公的機関のサポートを活用することも可能です。

事業継続力強化計画の策定は、一石二鳥、三鳥になる効果をもたらします。認定ロゴマークの使用、そして認定事業者として中小企業庁のホームページにも掲載されますので、外部へのPRにも活用できます。ぜひチャレンジしてみることを勧めます。

(Writer:源田)