以前のメルマガでも書かせてもらいましたが、事業承継に今やM&Aという選択は、あるかなしかという時代から、やるかやらないかへ移ってきたと言っても過言ではないでしょう。ただし、相変わらず売れやすい会社、買い手がつきやすい会社というのがあることは事実です。(バックナンバー138号をご参照ください)
ところで、弊社の周囲にはM&A仲介やファイナンシャルアドバイザリー(=FA)など様々な方がいらっしゃいます。私はその方々へ「いずれこの業界は登録制になる」「仲介手数料、アドバイザリー料も規定が出来る可能性が高い」と言い続けてきましたが、ここに来てようやく現実味を帯びてきました。それは、あまりにも雨後の筍のように事業者が出てきてしまい、中には「買い手(売り手)がいるので着手金を早く下さい」という着手金まがいもいれば、手数料を吊り上げるために双方に違うことを伝えて高額の手数料をせしめる悪質な事業者もいたり、玉石混交で業界が荒らされつつあるということも理由としてあるようです。(弊社の提携先のM&A事業者は皆様まじめに業務に取り組んでいることはもちろんですが)
そして、国もようやくM&Aの実態を把握するために
「M&A支援機関登録制度の設置」
となったわけです。もちろん、登録しないでM&A支援を行ったからと言って罰則があるわけでもありませんし、許認可制度ではありませんので、これまで通り自由にやっていいわけです。しかし、特に中小M&A(ここでいう中小とは、資本金1億円以下の法人または個人事業者を指す)をやるにあたっては、「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」において、M&Aの仲介手数料やファイナンシャルアドバイザー契約に係る手数料に係る費用の補助については、予め登録された機関の提供する支援に係るもののみが補助対象となる」と制度が変更になりましたので、この補助金を活用するためには登録が必須となりました。
この登録制度の目的は、M&Aに携わっている法人・個人を問わず、公正にきちんとしたM&A関連のビジネスをやっている事業者を把握するということになるわけですが、提出書類を見てみますと、①M&A支援実施体制図、②履歴事項全部証明書(直近3か月)③料金表、の3つが必須書類になっていますので、おそらく①に担当者名を入れたり、②の会社の目的事項にM&A関連事業が入っているか、などで実態把握すると共に、③の料金体系により不当に高い手数料を取っていないか、どのくらいが平均的な手数料として妥当なのか、など将来に向けて統計を取っていくという狙いもあるように思えます。
また、登録後は1年毎にM&A支援の実績を報告することが義務付けられていますので、単に登録だけしておくというのはダメで、実績を積んで経験値を上げ、能力を高めていくことも間接的に求められているようです。しかも、報告の対象となるのは、“中小”M&Aとなりますので、中小M&Aの実態を把握することで、さらなる施策に結びつけていこうという意図も垣間見えてきます。
さらに、あまりこちらは話題になっていませんが、登録したM&A支援機関による支援を巡る問題等を抱える中小企業等からの情報提供を受け付ける窓口も創設することとしていますので、これまでのように悪質な事業者などの情報が蓄積されるようになると、こうした事業者はやがて淘汰されていくことになるでしょう。
さて、この制度の今年の公募期間は、2021 年8月 24 日(火)~2021 年9月 21 日(火)と短くなっていますので、事業承継・引継ぎ補助金を使う使わないは別にして、『自社は国に登録されたきちんとした事業者である』『自社は公正でまじめなM&A業務をやっている』というお墨付きを得て、顧客に安心してもらうためにも、ぜひ早目の登録をお勧め致します。何しろこうした登録制度は、圧倒的に1期目の方が楽であり、必要書類も少なくて済むだろうと思われるからです。
(Writer:金子 一徳)