東京都荒川区「落語 と 茶道 で楽しく学ぶ事業承継」特集号

荒川区は東京都の東に位置する人口21万人~22万人の下町の都市です。

区の北側と東側を囲うように隅田川が流れており、都電荒川線が東西に横切っています。
都電荒川線の沿線はバラが植栽され、花と緑があふれる町です。

都心のオフィス街へ通勤する便が良く、隅田川沿いに公園が広がっているため生活環境が豊かです。昔ながらの住宅と工場が多くあります。近年は再開発が進んでタワーマンションも数多く建っています。
住民は素朴な人が多いです。区役所の職員の中には自転車で通勤している人もおり、職住が近接していることがうかがえます。

荒川区でも事業承継は区内の産業を守り、雇用を守るために重要な課題となっています。区は「次世代へのバトンタッチ支援事業」という名前で事業承継を後押しする支援事業を数年前から行っており、事業承継センター株式会社はその運営を受託して今年が3年目です。

事業が知られるようになり、訪問相談の件数は増えています。

訪問相談のテーマで最も多いのは、後継者問題です。最近の傾向として従業員への承継が増えていることが挙げられます。相談を受ける半数が親子ではなく従業員への承継です。株式や財産をどのように渡すかという課題は事業承継では避けて通れませんが、子へ継ぐよりも、他人である従業員へ継ぐ方が株式や財産の引継ぎは大きな問題になります。
次に多いのは、事業承継の必要性は分かっているが何から始めたらよいかわからないという、相変わらずの相談です。このような相談を受けていると、事業承継支援はまだまだ緒に就いたばかりなのだと思います。

今年度の支援事例を2つ紹介します。

A社について、M&Aを視野に入れた承継を考えているという相談で訪問しました。業界全体が縮小傾向であるところに、コロナウィルスの影響があって売上高が減少していました。子供は継がないとのことで従業員への承継を考えてはいるが、その従業員には、まだ事業承継の話はしていないとのこと。売上減少で社長が弱気になっており、M&A又は買い手がいなければ廃業も視野に入れているという相談でした。
まず、承継するに足る会社にするために販売単価と取引先の見直しから始め、商品の値上げと販売先の絞り込みによって粗利率の向上に目途が立ったところで、後継者候補である従業員と面談。後継者候補を巻き込んで今後の営業戦略を議論しました。その結果、後継者候補は事業の将来性に希望を見出すことができて、「継ぎたい」という返答になりました。承継の時期を2年後と定めて、会社の磨き上げを後継者と共に行うことになり、現在は定期的にウォッチしています。

B社について、従業員への承継の方法を教えてほしいということで訪問しました。すぐに事業承継したいが、個人保証が付いた金融機関からの借入金と経営者からの借入金が残っており、他人である従業員へ借金の負担を負わせるのは申し訳ないとのことでした。
まず、大まかな事業承継のスケジュールを協議し、代表の交代は今年、株式の移転を含めた完全な事業承継を3年後と定めました。次に、今後3年間の収支計画と返済計画を作り、資金繰りを見える化しました。ここまでの支援で経営者はかなり落ち着きました。
経営者が落ち着いたタイミングで、後継者会談を実施。経営者が後継者に対して会社の実情を説明し、借入金の意味と3年後の借入金の状態を丁寧に説明しました。その上で、改めて「会社を引き継いでほしい」とお願いして了承を得ることができました。

支援のポイントは何でしょうか?
事業承継の前に経営の見える化と会社の磨き上げを少しではありますが行っていることです。また、後継者に面談の場に参加してもらっていることです。

訪問相談を通して事業承継が少しでも進んでほしい、悩んでいる経営者や後継者の気持ちが少しでも楽になるといいと思いながら支援しています。
知り合いに荒川区内の事業者がいらっしゃったら本事業を紹介してください。「バトンタッチ支援事業」の枠組みを使って一緒に支援しませんか。

11月29日は事業承継フォーラムを開催します。落語と茶道で事業承継を優しく考える機会にします。荒川区内の取り組みを見ていただきたいです。どなたでも無料です。ぜひご参加ください。

 

(Writer:石井照之)

 

【荒川区】落語と茶道で楽しく学ぶ事業承継