ワンマン社長には嘘も方便

季節の変わり目になり、体調が狂ってしまう人が現れます。
人間も自然の一部であること、この地球に抱かれた命の一つであることを感じます。
そんな健康維持のためには、「休養、栄養、運動」の3要素をバランスよく生活に取り入れることが必要です。

しかし、多忙な経営トップにとって、自分の健康管理はおざなりにされています。
気が付けば、何日も休まずに働き続けたり、夜ごと会合に駆り出されて連夜の深夜帰宅であったり、自分で自分を酷使している人もたくさんいます。
今はコロナ禍となり、会社を守るために必死で働いている経営者も多いと思います。

そんな働き方改革の手も付けられていないトップに対して、人間ドックや成人病検査は必須のリスク管理になりますが、これすら受診しない人も見受けられます。

さて、事業承継の現場では、ワンマン社長の退任がうまく進められないという課題があります。
責任感が旺盛で、自分で何でもやってしまう、元気でバイタリティ溢れる経営トップ。
会社の原動力となって経営を引っ張ってきたのですが、自然の摂理には勝てない時がやってきます。加齢という言葉で医師から休養を強いられる時です。

いわゆるドクターストップを、人為的に作り出せれば、「老害として後継者の成長阻害」や、「事業承継の遅れ」を防止することも可能となります。
仲の良い掛かり付け医が居る場合は、こんな風に相談してみましょう。
「家族として、働き過ぎが心配」、「最近疲れが見えるようになったが休もうとしない」、「頑固になった」「人の忠告を受け入れない」、だから「先生から無理にでも休ませていただきたいのです」、とお願いします。
「先生、社長に休むように仕向けてください」、「検査入院を命じてください」、「会社から離れる時間を取り、休養をさせてください」と言うように、医師による強制力で、会社と切り離す作業を行うのです。

事業承継は会社と個人を切り分けることです。一種の外科手術が必要かも知れません。

その結果、ご本人に気づきを与えることもあります。
「人の命には限りがある」、「男性の平均寿命は80才」、「自分が居なくても回る会社にしないと・・・」と思っていただけるなら、嘘も方便、やってみる価値はあると思いませんか?

それでも効き目が薄い場合は、「全身麻酔によるリスク」を説明し、万一の場合は医師を訴えないという書面にサインを求めます。実際には全身麻酔ではなく、軽い睡眠薬の処方で、ぐっすり寝ていただくだけなのですが。これが大きな効果をあげた事例もありますので、ワンマン社長の居座りに苦しむ場合は、試して見る価値はありますよ。

(Writer:内藤 博)