特例承継計画の締め切りまで残り1年になりました

■特例承継計画の締め切りが1年後に迫っています
事業承継を考えている経営者の皆様は、特例承継計画を提出されていますか?
ご存じの通り、事業承継税制の特例措置を活用するためには特例承継計画を事前に提出する必要があります。その締め切りは、令和6年(2024年)3月31日、すなわち1年後です。

特例措置は、中小企業の事業承継を更に後押しするために国が用意した10年間の期限付き制度で、事業承継税制の内容が大幅に拡充されます。一定の要件を満たすことで、後継者が取得した自社株式に係る相続税や贈与税について100%猶予されるという制度です。

計画の確認を受けてない場合は特例措置が適用されません。また、特例承継計画の確認を受けた場合でも、結果的に特例措置を適用しないとしても、特にペナルティはありません。そのため、活用する可能性が少しでもある場合は、早めに特例承継計画を作成して提出しておくことをお薦めします。

贈与税、相続税ともに猶予割合は100%、他に、株式を受け取る後継者は最大3人まで、株式を渡す人は先代経営者を含む複数人が認められます。親族以外の後継者も対象です。詳しい説明は省きますが、納税が100%猶予されますから、大変条件の良い制度になります。

特例承継計画の作成により、これらの制度面のメリットがあるほかに、作成することで得られるメリットもあるのです。

 

■特例承継計画を作成するメリット
作成することで得られるメリットは次の4点です。

①特例承継計画を作成することが経営計画を作ることにつながる
②特例承継計画を作ることが事業承継を進める第一歩になる
③後継者が経営革新を考えるきっかけになる
④補助金の獲得につながる可能性が高まる

1つひとつ、確認してみましょう。
①特例承継計画は、後継者が株式を受け取る前後で、会社にどのような課題があるかを洗い出し、その課題にどのように対応するかを決めて書き込んでいきます。経営課題への対策を練るわけですから、経営計画を考えることに直結します。

②特例承継計画は、後継者に株式を譲る計画に他なりません。事業承継は「社長という肩書を譲ること」と「株式を譲ること」の2つが行われて完了です。肩書を譲ったけれど、株式はまだ先代社長が保有しているというケースは多くあります。このような場合に、株式を譲るきっかけになります。

③特例承継計画は、後継者が株式を受けった後5年間の経営計画を描きます。単なる計画ではなく、会社をより良くする革新計画を考えるきっかけになります。

④中小企業向けの補助金は数多くありますが、事業承継をすることで加点になるものもあります。また、特例承継計画を考えることが補助金申請に必要となる事業計画の構想づくりに役立ちます。

 

■作成は難しい!?
このようなメリットのある特例承継計画ですが、作成することは難しいのでしょうか?

企業側にとっては将来を見通すということ、経営者が自身の持っている株式を後継者に譲る時期を決めなければならないという点では難しいです。だからこそ、事業承継士という専門家が横にいて、どのように考えて意思決定すればよいかを助言する必要があるのです。もし、「書き方を教えてほしい」「申請を依頼したい」という要望があれば、最寄りの事業承継士にお問い合わせください。(下記のリストご参照)
https://www.shoukei.or.jp/menberlist

 

■事例紹介
事例を2つ紹介します。

①製造業:事業承継税制の特例を使いたいということで面談になりました。後継者が継いだばかりで、ITを活用して仕事の進め方を変革中。変革の結果、業績が上向きでこれからも収益が伸びそうとのことでした。業績が伸びて株価が高くなる前に株式を贈与するとよいですよと助言し、まずは特例承継計画を作成しましょうということでスタートしました。その企業は事業承継税制の特例措置を申請して承認を得ました。

②サービス業:50歳代の社長で後継者は20歳代の子でした。自身の年齢が若く、後継者も若かったので、株式の移管は10年以上先とのこと。特例措置は使わないとのことでしたが、先を見通したいということで特例承継計画を作成して都道府県知事の確認を得ました。その過程で、店舗を拡大したいという気持ちになり、新店舗の出店に必要な資材の購入に補助金を活用しました。その企業は、事業承継税制の特例措置は活用していません。

 

■最後に
特例承継計画の提出締め切りまで、残り1年です。事業承継士が計画の作成をお手伝いしますので、ぜひご相談ください。また、特例承継計画には、認定経営革新等支援機関の所見が必要です。皆様の周りでいらっしゃらない場合は、事業承継センター株式会社が所見を書くことができますのでご相談ください。
事業承継を少しずつ進め、経営者や後継者、それぞれの家族が幸せになる道を探りましょう。

(Writer:石井 照之)