■NHKの朝ドラ「舞い上がれ」にみる事業承継士の必要性
皆さんはNHKの朝ドラ「舞い上がれ」連続テレビ小説は見ていますよね!
このドラマは、一人娘が東大阪の、実家のネジ工場を母と一緒に事業承継する話なんですが、ドラマチックに脚本が組まれていて、二代目で会社を引き継いだ父親がリーマンショックの痛手の中で過労死するのです。
当然、世間は妻であるヒロインの母親に担保と保証人を引き継ぎ、雇用維持と商品供給責任を迫っていきます。
一度は廃業・M&Aを決意するものの、夫の遺志と従業員の不安解消のために、後継者として立ち上がる、それを娘が支える。
舞台が五島列島と東大阪、という形で進行していくのも見どころですし、ヒロインは有名なアイドルの実の娘であることも話題になっています。
再現性の高い現場設定と、経営コンサル的な立ち位置になる兄の存在も見ものですね。
3月いっぱいで終了するのですが、最後の山場で社会起業家として独立創業を目指すことになります。
■事業承継士に求められる傾聴の姿勢と伴走型支援
この「連続テレビ小説」は1961年からNHKの看板商品となり、おしん、君の名は、春よ来い、などの高視聴率を獲得したものもありました。この番組のバックボーンは「女性の一代記」生誕からの一生を負うことで、時代背景と社会性を記録していく、というのがコンセプトになっています。
私が何故このドラマを皆さんに見て欲しいと思うのか?
それは、まさしく事業承継士の必要性がはっきりと分かるからなのです。この場面で専門家が調整役として登場すれば、こんなトラブルは発生しないのに。
後継者の側に立って、「勇気を出して、思い切ってやってごらん」と手を引いて、背中を押すべき伴走支援型のアドバイザーが居ればなぁ、と思うからなんです。
そして、一方では、仕事の譲り方に問題があって、後継者も、周囲も困っているのに、それに気が付かない「老害」を発生させる現社長が存在します。
そこに、直截にモノを言うのではなく、本人が悟るように、回り道をしながらも核心を外さない誘導尋問を繰り返すベテラン刑事のように、じんわりと包み込みながら伴走できる事業承継士が必要なのです。
私たちはコンサルタントとして、時には黙って話を聞くためだけに時間を費やすことも必要です。若い専門家は、何とかして自分の知識を用いて課題解決しようと焦って、一方的に話を進めたり、黙っていることが恐怖に感じられる人もいます。
こうしたコンサルティングスタイルを見直して、自分の得意分野だけで解決を図ろうとせずに、常に全体最適を考えていただきたいのです。
■一般社団法人事業承継協会 代表理事 内藤博の使命
先日、品川区役所の主催する事業承継セミナーの一環として、「朗読劇」が行われました。配役はすべて事業承継士です。シナリオを練り、立げいこを重ねて、当日の舞台は熱気を帯びて観客を感動へと導きました。
こうした新しい実験を通じて、事業承継士を育て、みんなで社会を良くする運動を、一般社団法人事業承継協会として継続的に行うことが、私の使命であると再認識しました。
私は70歳を超えて、まだまだ元気がありますが、経営の第一線から完全に引くことにしました。2月末で事業承継センター株式会社の取締役会長を辞して、一区切りをつけます。
それは事業承継の3つの段階をすべてクリアして、代表交代の完成を果たし、一人のコンサルタントに戻ることを意味しています。
全国の支部活動や現場で、皆様とお目にかかることを楽しみにしております。
(Writer:一般社団法人事業承継協会 代表理事内藤博 元事業承継センター株式会社取締役会長)