遺産分割協議書と借金

遺産分割協議は、どういう場合に必要になるかといいますと、遺言がない場合になります。
つまり、いったん、相続人全員の共有名義になった後で、相続財産を誰にどのように分けるのか、を話し合うことを遺産分割協議といいます。

遺産分割協議をするにあたり、まず最初にすべきことは相続人の確定です。
被相続人の出生から死亡までの除籍謄本、改製原戸籍を集め、相続人を確定させます。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意が必要となりますので、後から相続人が出てくると遺産分割協議をやり直さなければなりません。
そのため、最初に相続人を確定させるわけです。
そして、次に相続財産を確定させます。

そしていよいよ遺産分割協議に移ることとなります。

ここでは、揉めることも予想されますが、賢明な皆様のことですから、既に家族会議を行っているという前提で、ここでは、比較的すんなりとまとまったということでお話しを進めていきます

遺産分割協議が成立したら、それを証するために作成する書面が遺産分割協議書になります。
遺産分割協議書には相続人本人の意思確認のため実印で押印をして、さらに印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書は、相続人間で合意した内容を対外的にも証明する重要な書類になり、遺産の相続手続きに必要です。
例えば、不動産の相続登記を行う場合、遺産分割協議書を登記申請書に添付しますし、亡くなった方の預貯金を相続人が引き出す際にも遺産分割協議書の提示を求められます。

遺産分割に実は期限はありません。
不思議に思われるかもしれませんが、相続開始後5年後、10年後に遺産分割をすることもできますし、実務上もそういうことが頻繁に起こります。
ただし、相続人がその間に亡くなって、子がさらに相続するという事態になりますと、遺産分割が確実にまとまりにくくなります。
ですから、早めに遺産分割協議をまとめるべきです。

また、税務の関係からも相続税の軽減特例が使えないケースがありますので、注意が必要です。
例えば、相続税の特例である配偶者の税額軽減、小規模宅地の評価減の特例は、相続の開始後10カ月以内に遺産分割が確定していることが適用要件です。(相続税の申告書に遺産分割協議書の写しを添付)

もし、遺産分割がまとまらない場合は、いったん特例を適用せずに、相続税を計算して納税することになります。
そして3年以内に遺産分割が確定した場合に、<更正の請求>により、これらの特例を適用した税額を計算し、還付を受けることになります。

民法では、遺産分割の対象に、物や権利などのプラスの財産のみで、マイナスの財産、例えば借入金のような債務については、相続開始時点において各相続人に法定相続割合で自動的に分けられるようになっていて、遺産分割の対象にはなっていないのです。(民法809)

どういうことかと言いますと、債務について協議し、特定の相続人Aが借入金をすべて引き継ぐと決めたとしても、これはあくまで相続人間の合意であって、債権者に対抗できないということです。

よって、相続人Aが債務の弁済を行わなければ、または債務の弁済を行う能力がないのをわかっていてあえてすべての借入金を引き継いだとしても、債権者は他の相続人に対して、各法定相続分相当の弁済請求を行えるのです。(債務保証も同じ)

借金は簡単に消えない、ということです。

(Writer:金子一徳)

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